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九州大学高分子機能リサーチコア

コア代表者 :高原 淳

(先導物質化学研究所・教授)

設立の背景BACK GROUND

リサーチコア設立の背景

 高分子は、サブナノスケールの大きさの構造単位(モノマー)が共有結合で多数つながり細長い鎖状分子形態をとる点に特徴がある。この鎖の連結性により、高分子はDNAのように情報の蓄積や、微少刺激が鎖に沿って数十マイクロメーターのオーダーの距離まで伝達され、正確な応答が可能な高性能機能性素子と考えられる。また、これらの素子から複雑な構造をもつ凝集体を集積させ、さらに多種・多彩な機能を付与できることになる。高分子の材料としての重要性は、白川博士が材料科学の分野で初めてノーベル賞を授与されたことからも明らかである。幸い、本学においても多数の高分子関連の研究室があり、世界に誇れる研究成果が多数報告されている。
 21世紀はフォトニクスの時代、ナノテクノロジーの時代とされ、エネルギー問題と関連して地球環境調和型社会の構築が要望されている。光と物質の相互作用が情報技術の中核となるフォトニクスにおいては、光と感受性の強い有機物質である高分子が最も有望な材料である。また、構造単位の一つを置き変えるか官能基を付与することにより自発的な組織化、相転移を生じさせる微細加工技術は、高分子の分野ではすでに頻繁に用いられており、局所的なより弱い相互作用から強い相関を引き起こさせるサブナノ工学技術の開発が現在の高分子科学への課題である。さらに、豊富な石油資源を背景に現代生活を支える一群の合成高分子の、環境破壊という負の側面に対処するべく、地球上に3億トンあるバイオマスの有効利用、天然高分子ならではの新規機能材料の開発が望まれている。また、省資源・省エネルギ−のために、機能性高分子超薄膜の作成やナノ粒子作成技術の開発が必要であり、それに伴い薄膜・ナノ粒子の表面物性研究、新規装置開発が重要となる。数部局に分散している学内の高分子研究者は、それぞれ強い意欲を持ち上記の課題に積極的にこれまで挑戦し、日本でトップクラスの研究成果を挙げてきた。さらに努力を重ね、本学を高分子研究において世界をリードする研究拠点の一つにするには、部局横断型の新しい総合研究組織を作り、情報を常時交換し、密に討論を重ね、個々の能力を結集し、共同して高分子を Key Materials とした諸課題の解決にあたるのが急務であるとの声が最近高まってきた。この強い要望こそが、高等研究機構「高分子機能創造リサーチコア」の学内設置を申請する第一の理由である。
 設置を申請する第二の理由は学外の要望・情勢に答えるものである。すでに平成9年6月に日本学術会議化学研究連絡委員会、材料工学研究連絡委員会から高分子基礎研究の研究体制整備・構築の必要性を指摘した報告書「高分子科学研究の推進について」が提出され、運営委員会において日本学術会議報告として採択されている。これを受けて東京工業大学は、(公社)高分子学会と連携し、平成12年4月「国際高分子基礎研究センター」(ICMS)を学内措置により設置している。東工大における高分子研究は質・量ともに充実しており、ICMS との情報ネットワークの形成は、日本のみならず世界の研究動向をいち早く知り、世界をリードする研究を効率よく遂行していく上に大いに役立つのみならず、中国、韓国への情報の発信基地としてアジアにおける高分子研究の中核拠点としての本学の地位を揺るぎないものとすると確信される。